エヴァンゲリオン。
それは破滅の物語だった。
この話の題名も同じ名前。
でも違う。
もしああだったら、もしこうだったら・・・・・・
そんなもしもの物語。
If・・・・・
第一話 使徒襲来
『本日12時30分、東海地方を中心とした、関東地方全域に特別非常事態宣言が発令されました。
住民の方々は速やかに指定のシェルターに避難して下さい』 非常事態を告げるアナウンスの中一人の少年が公衆電話の前で立っている。
『特別非常事態宣言発令のため、現在通常回線は全て不通となっております』
「チェッ、ダメか・・・・・・」
悪態をつきながら少年・・・・・碇シンジは受話器を乱暴に元に戻す。
「(はあ・・・・父さんも呼び出して何させるつもりなんだろう?)」
カバンから手紙を取り出ししげしげと眺める。
そこにはおびただしい量の文字で埋め尽くされた手紙と、女性の写った写真があった。
この手紙だが勿論差出人はゲンドウである。
手紙に書かれてる内容とは、
『体の調子は大丈夫か?』とか『パパと会えなくて寂しいか?』とか、
『寂しかったらいつでも電話するんだぞ。』とか。『いつでもVOLT機で駆けつけるぞ』など親馬鹿ここに極まるみたいな文章が延々と続いていた。
そして最後に「やっと会えるなぁ、シンジ・・・・」と締められてある。
今度は写真の方を見てみる。
そこには黒い髪のロングヘアーで胸の谷間をちらつかせてる姿が写っていた。
どんな脳なら見知らぬ中学生にこんなもの送れるのか?というくらい非常識な写真だ。
手紙の内容ではこの女性が迎えに来るはずなのだ。
だがその迎えが1時間すぎても来ない。
それをさっき電話しようとしたのだが御覧の通り繋がらない。
「ハアー」と深ーい溜息をつくと近くの階段に腰掛ける。
しばらく塞ぎ込んで考え込む。
「(これからどうしよう?迎えの人もいないみたいだし、非常事態宣言もでてる。
やっぱりシェルターに向かうべきだよなぁ・・・・・)」
だんだん考えがまとまり始めた頃周りが騒がしくなってきた。
「なんだろう?」首をかしげ、顔を上げ見回してみる。
するとさっきは見かけなかった戦闘機やミサイルが飛び交っていた。
ついでに怪獣映画でしか見ないような全長40Mくらいの怪獣が
大暴れしていた。
ん?戦闘機やミサイル?40Mくらいの怪獣?
シンジの頭が混乱していく。
ごしごしと目をこするシンジ。
一度下を向いてなんとか気を沈めようとする。
「(な、なんだよあれ!?
漫画でしか見ないような光景・・・・・!」
パッとシンジの頭が閃く。
「(そうか、そうだ・・・・これは僕が見てる夢なんだ!
きっと葛城さんって人を待っている間に疲れて寝ちゃったんだ。
それしかないよ!
うん、そうだ。そうに決まっている。違いない。そうコレは夢だ。夢なんだ・・・・・・・)」
かなり強引だがブンブンと頭を振って必死にさっきの映像を頭から追い払う。
再びゆっくりと顔を上げてみる。
辺りにはただビル街が広がってるだけでさっきまでのはシンジが言った通り幻覚だったのだ・・・・・・・・な訳なく
相変わらず頭上では騒がしく戦闘機が飛びまわり、怪獣は元気に暴れまわっていた。
「あ、あは。あはははは。」
あまりの異常事態についにシンジは放心してしまった。
怪物の右手からでた光の槍が一機の戦闘機を打ち落とす。
それがシンジの方へ燃えながら落下していく。
このままいけば確実にシンジを巻き込む。
その時まるでタイミングを見計らったように飛び出してきた青い弾丸。
弾丸?
車の間違いではないのか?
いやそれは肉眼では巨大な弾丸に見えた。
それ程速かったということだ。
そこからでた風圧はシンジを吹き飛ばし結果的にシンジは助かった・・・・・・のだが
どがしゃーん!!
青い車は怪物のせいで崩れていたガレキの山へと突っ込んで行った。
時速200kmをゆうに超えるスピードで。
倒れたショックで正気に戻ったシンジは慌てて側に駆け寄る。
しかし目の前にはガレキの山だけ。
「(き、気のせいかな?さっき車に見えたんだけど・・・・・)」
それは気のせいではなく真実なのだが、よくもあのスピードで何であるかということが判別できたものだ。
この少年もなにか人並みを大きく逸脱してそうである。
「(・・・・・・・・)おーい。」
しーん
試しに叫んでみる。
しかし帰ってくるのはただ沈黙だけ。
後ろで燃えている戦闘機の残骸がまるで火葬場のような雰囲気を醸し出している。
どよ〜んとした重い空気がシンジに圧し掛かる。
思わずシンジは両手を合わせる。
ガラ
?今ガレキの中から音がしたような?
頭を捻るシンジ。
ガラガラ
しかも段々近づいてきてるような・・・・・・
それはもう普通に聞こえるレベルまで大きくなっていた。
ガラガラガラ
近づいてくる音に自分が今まで生きてきて培われた危機感知能力が警鐘を鳴らしていた。
逃げろ、逃げないと死ぬぞ!と・・・・・
ガラガラガラガラ
次の瞬間にはもうシンジは全速力で走っていた。
もう体が勝手に動いていたと言った方が正しいだろう。
それはまさに予感的中。
どごーん!!
突っ込んでいった時と同じような轟音が響いたと同時にガレキが吹っ飛び盛大な砂埃がもくもくと上がった。
ついでにシンジは本日2回目の空中ダイブを決め地面に熱いキスをした。
「大丈夫〜?」
そんなことを知ってか知らずかシンジに能天気な声が投げかけられた。
声の感じから若い女性だといことがわかった。
「あなたが碇シンジ君よね?」
「あ、はい・・・・・・」
普通吹っ飛ばされたなら文句の一つでもいうだろう。
しかしこの少年碇シンジは驚きのあまりグウの音もでなかった。
あの激突で無傷なことに。
しかもご丁寧に車の方にも傷ひとつなかった。
「遅れてごめんなさいね〜。私があなたを迎えにきた葛城ミサトよ。」
「ど、どうも・・・・・・」
「あ〜、そんなに緊張しないで。気楽にいきましょ、気楽に。」
「は、はあ・・・・・・」
街では怪獣と戦闘機が盛大に暴れていて、しかも目の前でアンビリーバボーな奇跡体験をしたシンジはとても気楽にできるはずは無かったが、とりあえず頷く。
それに「迎えに来た」という言葉がかなり頭に引っ掛かる。
「(まさか、まさか・・・・・・・あれに乗るのか?)」
そのまさか。
次にミサトからでた言葉は彼に大きな絶望を与える。
「さあ、時間がないの。早く乗って!」
「い、い・・・!」
「いやだぁ〜!!!」と叫ぶ前に首根っこを捕まれミサトに強制的に車に乗せられるシンジ。
あの常識(目の前で起こってることは非常識なことだらけだが)を覆すスピードで突っ込んで行った
光景が目に浮かぶ。
あれと同じ目にあっても自分が生きていられる保証は・・・・・・・・ない。
「ちょっと運転が荒いけど我慢してちょうだいね。」
シンジは訴えかけるような目で首をいやいやと横に振ったのだがミサトの目にはもう入ってなかった。
「ちょっと運転が荒い」と言ったがさっきの光景を見ると、とてもじゃないがちょっととは思えない。
ついでにビールを一気呑みして景気づけまでしている。
「クウ〜。これに限るわね。」
グイッと袖で口の回りを拭いてエンジンをエンジンをかける。
シンジの意識がドンドン遠くなっていく。
「(母さん、今そっちに行くよ・・・・・・)」
それを言い終える前に再びその姿を弾丸に変えた車は発進していった。
ところ変わって作戦本部。
ここには妙な空気が流れていた。
「も、目標は依然健在。第三新東京市に向かい進行中。」
「こ、航空隊の戦力では、足止めできません。」
3人のオペレーターが状況を報告した。
だが声がかなりどもっている。
「そ、総力戦だ入間も厚木もあげろ。」
「出し惜しみはす、するな。な、なんとしてでも目標を潰せ。」
それは指揮官も然り。
この異様な雰囲気にみんな精神的に参っている。
その原因となるのはNERV総司令碇ゲンドウ。
この男からはいつも人を圧迫するような感じを与えていた。
それが今回は違っていた。
なんとニコニコと遠目でもわかるくらいの満面の笑みで座っていたのだ。
これは怖い。
かなりホラーチックだ。
しかし戦闘は続いているので、気を抜くわけにはいかない。
「何故だ、何故効かんのだ。(こうなったら・・・・・・)」
イライラを隠せない指揮官。
その理由は攻撃がまったく効かず怪獣は進行していってることではない。
実は彼が苛ついているのはこの場所から離れられないことだ。
その為には使徒を倒さなければならない。
だが肝心の使徒は元気いっぱい。
全く倒すメドはN2爆弾しかない。
電話がかかり、発動の意志を伝えた。
そんなことお構いなしのゲンドウは相変わらず笑顔だ。
といっても傍目から見たら怪しくニヤリと唇を歪めてるだけにしか見えないが・・・・・・
「やはり、ATフィールドか?」
初老の男性―冬月コウゾウが戦自の指揮官を不憫に思ったのだろう。
戦闘に気持ちをいれさせる為額に汗を貼りつけながらもゲンドウに問う。
「ああ、そうだな♪」
だがそれは完全に焼け石に水だった。
ゲンドウは相変わらず不気味に笑っていた。
「(こいつめ、わざわざ語尾に♪までつけおって・・・・・)」
そんな様子のゲンドウをジト目で睨む冬月。
しばらくそうしていたが、やがて溜息がでてくる。
「(碇・・・・・そんなにシンジ君と会えるのが嬉しいのか・・・・・・・・・)」
冬月は深い、深ーい溜息をついた。
体にかかる凄まじいG。
ここは車のはずなのにまるで重力制御装置に放り込まれたようだ。
しかし強烈なGに慣れ始めたシンジはふと窓に目をやる。
戦闘機がどんどん離脱していく。
「葛城さん、戦闘機がどんどん離脱していってるんですが・・・・・」
「ミサトでいいわよ、シンジ君。・・・・・ってマジ!?N2爆弾を使う訳!?」
シンジの言葉に顔が青ざめるミサト。
でも彼女なら例え爆心地にいたとしても無事なようが気がする。
「仕方ないわね。できれば使いたくなかったんだけど・・・・・」
そう言ってクラクションのカバーをはずしレバーを出す。
またもやシンジの頭に嫌な予感がする。
このままN2爆弾の餌食になった方がマシなような・・・・そんな予感がしたのだ。
「ちょっとま「ブースト・ON!!」」
シンジの言葉を遮りレバーを力任せにグっと引く。
途端にエンジン音が変わる。
ブロロロロロロロロロ!!
明らかに激しくなっている。
「さあ、いくわよルノーちゃん♪」
ミサトは勢い良くアケセルを入れた。
その横でシンジはグッタリしている。
「(もう、どうにでもして・・・・・)」
ミサトは、はなからそのつもり。
最早誰にも彼女は止められない。
青い弾丸はさらにスピードをあげ凄まじい爆発をバックにNERVへとひた走るのだった。
「やった!!(こ、これでここから離れられる。)」
軍人の一人が喜々として立ち上がり叫ぶ。
「残念ながら君たちの出番はなかったようだな。」
冬月とゲンドウを見ながら言う。
ホントに嬉しそうだった。
「衝撃波来ます。」
センサーと主モニターの映像が消え砂嵐が走る。 「その後の目標は?」
「電波障害のため、確認できません。」
「あの爆発だ。ケリはついている」
そうであって欲しいと祈りながら言い放つ軍人の一人。
「センサー回復します。」
「爆心地に、エネルギー反応!!」
「なんだとぉ〜っ!!!」
この場所から離れられると信じてやまなかった軍人の一人がその報告に愕然となり立ち上がって叫ぶ。 「映像回復します」
モニターにはほとんど攻撃前のまま残っている使徒。 立ち上がって驚愕する軍人たち。 「わ、我々の切り札が・・・。」
「なんてことだ・・・。」
「化け物め!!」
一人が悔しげに机を叩く。 軍人たちは力無くイスにガクッと座り込んだ。 ホントに悲しそうだった。
「ええ。心配ご無用。彼は最優先で保護してるわよ。
だから、カートレインを用意しといて、直通のやつ。 そっ、迎えに行くのはわたしが言い出したことですもの、ちゃんと責任持つわよ。じゃ!!」 電話を切るミサト。
後部座席には他の車から拝借したバッテリーが並べてある。
前までの運転とは打って変わって穏やかなものになっている。(普通と比べれば荒いが)
どうやらアノ速度を出すには特殊なバッテリーでないといけないみたいだ。
五分間超スピードで走った後、煙をあげ止まってしまった。
「あ、あの・・・・ミサトさん?」
「ん、なあに?」
「後ろのって・・・・・・」
「ああ、いいの、いいの。非常事態だから。」
あっけらかんというミサトに「いや、よくないだろう」とツッコミを入れかけたが、「この人には何を言っても無駄だろう・・・・」という思いが込み上げてきて押し黙ってしまった。
爆心地に佇む使徒。
先程の爆発で傷ついた体を修復中。
ついでに顔が二つに増えていた。
「予想通り自己修復中か。」
「そうでなければ単独兵器として役に立たんよ♪」 冬月の問いにゲンドウが答えた。 その時使徒を映像を送っていたヘリコプターが使徒の放った光線で破壊され再び映像が途切れてしまう。 「ほう。たいしたものだ。機能増幅まで可能なのか。」 「おまけに知恵も付いたようだ♪」 「この分では再度侵攻は時間の問題だな。」 少し語尾を強めて言う冬月と、ニヤリ笑顔のゲンドウ。
必死の彼の訴えもゲンドウには届かない。
ついさっきもゲンドウの雰囲気のせいで、指揮官の一人が精神的に参ってしまい倒れてしまった。
その後ゲンドウが柄にもあわず、あの笑顔で「お大事に〜」などと言うもんだから、さらに症状が悪化してしまった。
あとの二人もかなり限界にきている。
このまま戦自の指揮官に全滅されては困る。
無駄だとわかりつつもゲンドウに訴えつづける冬月だった。
『ゲードが閉まりますご注意下さい。発車します』
車を載せ発進するカートレイン。
さっきまでのスリリングなドライブで身も心もボロボロのシンジは息絶え絶えだ。
シンジは今生きてる事を心から神に感謝した。
「と、特務機関ネルフ?」
「そ、国連直属の非公開組織。」
「父さんのいるところですね・・・・・・・」
「まっねー。お父さんの仕事、知ってる?」
「人類を守る、正義のお仕事って父さんが言ってました・・・・・・」
ゲンドウに自分の組織が正義の為に戦っていることから話の筋道がずれていき、
正義とはなんだ?という話題を延々と説かれたことを思い出し、思わず溜息が込み上げてくるのだった。
「今からこれより本作戦の指揮権は君に移った。
・・・・お手並みを見せてもらおう。」
ゲンドウに向かって言い放つ軍人。
内心ここから離れられると喜びに満ち溢れていた。
「ええ、了解しました。
貴君の意志を引き継ぎ勝利を勝ち取りたいと思いますよ。」
ゾゾゾゾゾと軍人達の体に寒いものが走って行くが、軍人達はなんとか気を引き締め耐える。
「け、健闘を祈る!」
素っ頓狂な声を上げ、部屋を逃げるようい出ていった。
かくして部屋には、もうモザイク修正が必要な程顔をニヤニヤしているゲンドウとそれに怯えるNERV職員と
頭痛を抑える為にこめかみを押さえて立っている冬月が残された。
『目標は今だ変化なし』
『現在迎撃システム稼働率7.5%』 「国連軍もお手上げか。どうするつもりだ?」 冬月がゲンドウに訪ねる。 「初号機を起動させる。」
「初号機をか? パイロットがいないぞ」 「来てるではないか。愛しの息子が・・・・・」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ミサトとシンジを乗せた車が、カートレインによって運ばれている。
「大丈夫?ちーっと運転が荒かったかしら。」
ミサトは相変わらずぐったりしているシンジに向かって舌をペロリとだして謝った。
まるでいたずらしてしまった時の子供のようだ。
「あ、はい・・・(どこがちーっとなんだ。ちーっと。)」
シンジは内心上記のように鋭いツッコミを入れてるのだが、口に出しては言えない性格。
とりあえず今はあの地獄の5分間で削られた体力を回復することが先決だ。
いまだあの状態から立ち直れていない。
気分転換に窓の外を眺める。
するとジオフロントが目に飛び込んできた。
「わあ〜、すごい・・・ジオフロントだぁ〜・・・・」
力無く口からその言葉を捻り出す。
精神的にでも明るい気持ちにしたかったのだろう。
しかし彼の今の体力ではそれで精一杯だった。
明るくなるどころか無駄に体力を消費してしまった。
それに写真も何度か見ている。
「そう、これがあたし達の秘密基地ネルフ本部。
世界再建の要、人類の砦となるところよ。」
その言葉にシンジはなんの感慨も受けなかった。
父親に何度も聞いたセリフ。
自分で吹っ掛けておいてなんだが、それよりも「一体これからどうなるんだろうか」という思いが込み上げてくる。
世界再建?人類の砦?
今顔に疲労の色が色濃くでている彼にとってどうでもいいことだった。
できれば平凡な日々をおくりたい。
しかしそれは、かなわぬ願い。
これから彼には過酷な運命が待ち受けているのだから・・・・・
つらく険しい道を歩まなければならないのだから・・・・・・・
あとがき
どうも皆さん、はじめましてばるたんと申します。
この度、蛍石さんのHPに投稿する事になりました。
駄作ながら蛍石さんのHPを飾らせていただきます。
とりあえず説明しておきますが、この作品はノリが命です。
ストーリーがなんのその。
これから登場するキャラも壊す予定です。
ジャンルは電波ですね。
受信しだい書くという風になりそうです。
こんな作品ですが読んでいただくと嬉しいです。
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